僕は、たまに気まぐれでいつもと違う道を通ってみることがある。
例え少し遠回りになっても、ちょっとした気分転換になるからだ。
先日も歯医者の帰り道、気の向くまま自転車を走らせていると見慣れないお店が目に止まった。
こういう新しいお店が発見できるのも気まぐれが起きる原因なのかもしれない。
吸い寄せられるように僕はお店の方向に自転車を走らせた。
そして少し自転車のスピードを落とし、できるだけ自然にお店の様子をうかがいながら一度通り過ぎた。
どうやらコーヒーの専門店のようだ。
自家焙煎のコーヒー豆も売っているけど、店内でコーヒーも出してくれるみたいだ。
「気になる・・・」
僕は自称コーヒー好きだが、砂糖とミルクはがっつり入れる派だ。
正直コーヒー豆の味の差を感じられる自信はないし、もしコーヒーを少しはわかったフリをするために、頼んだコーヒーが苦かったりしたら最悪だ。
苦いのは嫌なのだ。
甘くないとダメなのだ。
わかったフリして、砂糖とかミルクを大量投入してたらダサすぎるし・・・。
そんなことしたらヒゲを蓄えた怖そうなコーヒーマスターの店主に、冷めた目で見られんだろうな~。
いや、考えすぎだろ。
お客さんがどんな風にコーヒーの味を楽しもうが自由なはずだ!
なんて
いらない深読みしながら僕はコーヒー専門店の方へ引き返していた。
僕がなぜこんな深読みをするかといえば、高校時代にさかのぼる。
世界史の山本先生は自他ともに認めるコーヒー通だった。
コーヒーの話になると、何度となく世界史そっちのけで自分のコーヒー論を語るほどだった。
その中で僕の脳裏に焼き付く山本コーヒー語録がある。
「コーヒーの味を楽しむのに、砂糖とかミルクは入れてんじゃね~!」
世界史の内容は何一つ覚えていないが、山本先生のこの言葉だけはなぜか鮮明に覚えている。
そしてこの山本コーヒー語録が、今まさにこのコーヒー専門店に入るのにとてつもなく重い足かせとなっているのだ。
ここで勇気を出さなければ、これからもこの山本コーヒー語録の呪縛に囚われ続けてしまう!
そんなことを回想していると、気づけば僕はコーヒー専門店の前に自転車を停めていた。
行け!
ドアを開けてしまえ!
後は野となれ山となれだ!
僕はついにそのドアを開いた。
カランカラン
僕の入店を知らせる音と共に
店の奥から穏やかそうな男性が迎えてくれた。
ヒゲを蓄えた怖そうなコーヒーマスターは現れなかった・・・。
そして店主が怖くないと知った僕は、素直に「甘い奴でおすすめをください」とオーダーした。
店主がおすすめしてくれたのはハチミツミルクコーヒー。
間違いない!
僕のためにあるんじゃないかというくらいにドンピシャなメニューだ。
席に座り少しの間世間話をしながら待っていると、お待ちかねのそれが僕の前に運ばれてきた。
コーヒーの味を下手に僕が描写するのはやめよう。
繊細な味を伝えるには僕の文章力が足りない。
いや味覚が足りない・・・。
とにかくおいしいコーヒーでした。
甘くて。
奥には立派な焙煎機が鎮座していて素人には中々の迫力。
コーヒー豆のお店だからあって当たり前なんだろうけど・・・。
それでもまだ小さい方らしいから驚き。
そして、店主との会話を楽しみながらコーヒーを飲み終えた僕は店を後にした。
なんだろうこのリア充感は。
きっとカフェじゃなく、コーヒー専門店でコーヒーを飲んできた自分に陶酔しているのだ(甘いやつだけど)
大人の階段上っちゃった感じがしているのだ(もう40歳だけど)
でも僕は満足だ。
毎回違うコーヒーを頼んでみるのも面白いかも。
そのうち豆の違いのわかる大人になってやる。
また近所にお気に入りのお店を見つけちゃいました。
相模原のコーヒー好きの方はぜひ足を運んでみてください。
自家焙煎コーヒー専門店 Freshness Coffee Roaster (フレッシュネスコーヒーロースター)
神奈川県相模原市中央区氷川町3-4オリエンスF番館1号室
042-707-8281
10:00~19:00
月曜定休